精神

福利厚生担当だ。

空調が扇風機や窓の開放で止まっている会社が多く、著しく労働効率が低下している会社も多いという。
人間は26度を上回ると1度ごとに3%労働効率が低下する、と聞いたことがある。
しかし36度で30%ですむのだろうか、と考えたりもする。

日本は湿度が高く、おなじ30度でもやや居心地が違う。
しかし聞くところによるとイギリスに統治されていたホンコンはさらにムシ暑いが、英国紳士は決してノー・タイなどでは無いのである。

例えばプログラマーなら職人であるから、YシャツやTシャツとカーゴパンツなどの方がセクシーであり、例えばトレーニング・ジムでにまでポロシャツを着てくる必要は無い。
しかし会社の顔である営業マンや国の顔である政治家がノー・タイともなるとやや趣が異なってくる。

日本ではスーツの伝統が無いのだ。だからスーツを着るというのが精神を着るというのに至ってないのである。

そんな精神だと、事を起こすことに覚悟と責任が無いのではないだろうか。

やる気の無い会社員でも、会社のバッジをデカデカとつけたまま、新橋で寝っ転がる酔っ払いは居ない。
羽織袴は、成人式で暴れる連中であっても、なんだか知らないがほとんどの人間がまじめに着ている。

だからこそ、家に仕事を持ち込んでしまうのかもしれない。

一休の禅の師は、まず形から入れと言った。
しかし一度崩れてしまった形から入るのは難しい。

我々はまず管理された食事とサプリメント・プログラム、的確なハード・トレーニングと休息から入るのである。

さあ、そろそろ、ジムの時間のはずだ。

初夏

撮影班です。

もうすぐ蛍の時期です。

ここは津波で破壊される前は、蛍が飛ぶ場所でした

 

150

今年は飛ぶのでしょうか・・・・・

 

 

night

 

飛ぶでしょう。

東日本大震災 5

2時間後に にじかんごに・・・・
断水
だんすい
します  します・・・・・
水を みずを・・
お風呂などに おふろなどに・・・・
溜めてください ためてください・・・・・

家に着くと初めて聞く町内放送が始まっていた。 断水は記憶にない。

あの地震でまだ水が出るのか?と疑問を感じつつ洗面所にある蛇口のレバーを上げるとやはり何も出てこない。ライフラインの電気と水道が停止した。 もう止まっているであろうガスの元栓は地震の際に閉めている。

まずやることはやった。
今どんな状態なのか確認しようと期待せずに携帯電話を取り出すと予想外にも電波は生きており、Twitterも生きている。
普段よりやや時間がかかっただろうか。
Twitterには

釜石で4m 逃げて

という一文がある。
これ以外を見た記憶はない。

”まいったな ついに来たか”

「津波」は三陸沿岸に生まれた者にとって現実的な響きがある。

私はとりあえずヒゲを剃ることにした。
水道が止まっているので電気カミソリを使う。父親に送ったパナソニックのなかなか良いものだ。

鏡をのぞき込みながらヒゲを剃る間考えたことは以下の通り。

■津波は3倍以上の高さを想定すること。
大津波なんて実際に見たことはない。3倍にとらえておけば損はないはずだ。

■今持っている荷物だけで逃げること。
■いかなる忘れ物があっても津波がおさまるまで一切戻らないこと。

津波に巻き込まれないためには行きは急ぎ、帰りは時間が経ってからという基本を守る必要がある。

この鉄火場でひげを剃るのには忘れ物を取りに来るような余裕をわざと無くす効果もあった。私にとって「余裕」は多すぎると「油断」につながりがちだった。

■町内で最も高い場所に避難すること。
この町内で最も高いところは、「日本三景 松島」への眺めがいい多聞山だっただろうか?山と名前がついており標高は50m前後であったはずだった。

(後に調べたところ、この山よりも町役場がある場所が最も高いということです 素晴らしいことだと思います)

shichigahama

-powered by Google-
上が松島湾。左方面に多賀城市と仙台市がある。陸地最上部の突端が多聞山。

この家は海抜20数メートルであり、また海に対して突き出ている。地形上そこまで津波は高くならない。釜石で推測4m程度なら90%安全であるのは間違いなかった。
しかしジョーカーを引いたら死ぬトランプの束を想像して欲しい。引かないで済むなら引かないはずだ。
避難途中やや低いところを通って逃げることになり危険だが、町内放送が生きていること、そして町内放送ではまだ津波のアナウンスをしていないことを考えると逃げるのは十分間に合うはずと考えた。
生存率90%から99.9%の場所に移動することにする。

■避難に自動車を使うが、渋滞に遭ったら乗り捨てること。
自動車を捨てるのは勇気が要りそうだが、これはしょうがない。

■避難する人をはねないよう、注意して運転すること。
逃げる間人をはねて死なせてしまったらあまり良くない。それだけは避けるために急ぎすぎないことにする。

私は何か大きいことがある前はひげを剃ることにしていた。
大学時代に所属していた応援団は合宿の際、ひげを剃るのは禁止されていた。
合宿を終えてからひげを剃るのである。それは儀式であり、意味は未だによく分からない。しかしそれ以来ひげ剃りは何となく特別な行為なのである。

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応援団活動中の私

約1分足らずだが、経験上ひげを剃ると落ち着く。
そしてひげを剃っておけば 津波で粉みじんになるかもしれないが・・・ 死に顔は無礼ではない。

玄関の鍵をかけるとき、この標高ならまず大丈夫だと思ったが、見ることが出来るのは最後かもしれない。

よし、行くか。

私は丁寧に鍵をかけ、車に乗った。

震災から3ヶ月 梅雨

震災から3ヶ月経ちました。

これから梅雨の季節です。弱った地盤では土砂崩れなどが心配されます。

大雨注意報、大雨警報に今まで意識されていなかった地域もくれぐれもご注意ください。特に治水能力が弱った今では、津波に負けず劣らず恐ろしい災害になり得るかもしれません。

どんどん声を掛け合いましょう。

wood

東日本大震災 4

私は近所の地震の被害を確認しようと家から出ると、お隣は崩れた塀が当たりかなり変形してしまった車を見て呆然としている。私はばつが悪そうに一礼し、最小限の近所の区画を一周することにした。たとえば箪笥にのしかかられている人がいるかもしれない。偶然にも体は温まっているため、助けられる可能性も僅かに上がっていた。

[ 不明 14:55分? 福島県相馬 第1波到達 ]

足の不自由な婦人が居る家に「大丈夫ですかー!」と呼びかけてみると、「あら、大丈夫よ-!」という返事が返ってきた。特に他にも異常は無いようだ。これで点検は終了のはずだった。

しかし自宅に戻ると、玄関の壁のタイルが一部欠けて落ちていた。ウロのような穴から除ける中は雑木林で倒れて朽ち、分解が始まった木の様そのものだ。
シロアリだ

鉄筋で出来ているとはいえ、一部に当然木が使われている。その一部が知らぬ間にシロアリに囓られていたのだ。

[画像は用意しておきます]

14年ほど前であろうか。シロアリに分解され尽くされた我が家の柱は人差し指で突いてみるとしっかりと中指のこぶしが当たる。そのこぶしが当たった衝撃で柱の内部はサラサラと乾燥した砂が落ちるような音を立てるというおまけ付きだ。
家族は共通した結果に落ち着いた。

「建て替えよう」

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シロアリ。阪神淡路大震災で木造住宅の倒壊原因として非常に多くの割合を占めたとされ、「人を殺す」生物として一躍脚光をあびた。現在も木造住宅の最大の脅威になっている。

シロアリの対策に関しては詳しく記述しないが、間違いなく「必要」である。ところが木造住宅を選んだとしても、その知識を持つ人はほとんどいない。とにかく白いアリが家を食いつぶすので困ったら業者に、といった認識のはずだ。

私はITのお仕事をしており、その中の仕事にソフトウェアを作っている。プログラムと呼ばれるものだ。そこにはいくつかのお約束がある。そのうちの2つを述べておく。

“自動化出来るものは、出来るだけ自動化せよ”
“緊急事態は最悪のタイミングでやってくる”

シロアリはなるほど丁寧に予防をして丁寧に駆除をしていけば防げるのだろう。だらしないと言われればそうなのかもしれない。

例えば家族が病気になったとする。お金が一時的にではあるが無くなったとする。
それはシロアリを駆除する期間である。
どこにでもある話だ。ありふれた話である。しかし、緊急事態は最悪のタイミングでやってくるのだ。

例えば北側に住む隣人が、盆栽が大好きだったとする。毎日水をたっぷりやるわけだ。その湿気はシロアリにとって最高の好物になるのである。
鉄筋はもちろん寿命もあるし、通常木も使われている。だが、シロアリが原因で地震の際に即倒壊という事態への対策が自動化されており、少なくとも気にしなくて住む。
それ以外にも、火災対策やそもそもの丈夫さもある。

木ばかり貶めてしまったが、もちろん、木の「美しさ」はある。特に最近の木造は昔より頑丈となっている。とてつもない手入れが必要だが、残っている歴史的建造物は今も人々を魅了するのである。選択肢として十分に存在するのだ。そんなとき私がアパレル業界に居た頃に覚えたこんな言葉を思い出して、面倒がらずに手入れをしていって欲しい。

“おしゃれは我慢比べ”

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ここでもし鉄筋じゃなかったら、余震のたびに怯える生活であったのは間違いない。
落ち着いたら色々対策をしなければならないだろうが、この時点で一瞬で倒壊という危険は避けられたのである。
シロアリの原因は私の中でだいたい固まっている。
決定的なのは、我が家の父親は北側にもやたら水が必要な木々を植え込んでいることだ。「根腐れしない程度までたっぷりとやる」
口癖である。いつのまにかシロアリにもたっぷりとやってしまっていたようだ。

そしてこの間まで私に情報は無かった。

節電2

福利厚生担当だ。
節電と明かりの関係について述べてみたいと思う。

現在おおざっぱに”LED”と”白熱電球”と”蛍光灯”があり、白熱電球はとても悪者にされている。LEDは正義の使者であり、蛍光灯はなんだかよく分からないが企業として節電対策をしていない古い会社だと思われる。

白熱電球はかなり悪で、消費電力が明らかに多い。それなら電球型蛍光灯は強い。
さらに白熱電球はいきなり切れるのでびっくりして困ってしまうが、電球型蛍光灯は黒くなってくるので寿命が明確である。
ここまでは間違いない。

そして、LEDも蛍光灯も、「作るのにもエネルギーが要る」
ここまではOKだ。

さらに、現時点では蛍光灯の方が圧倒的に安い。ここも間違いない。今後は知らないが。

またLEDは基本的に蛍光灯より暗いし、明るさがまんべんなく光らない。ピンポイントでは明るいかもしれないが、家はスポットライトでショータイムする場所ではないのである。
蛍光灯と同じ明るさを得ようとすると、実はLEDのほうが消費電力が大きいともされ、最低でも同じとされる。今後は知らないが。

そう、明るさと価格と消費電力でまだ蛍光灯に譲り気味のLED。
「寿命」。ここだ。LEDの方が長い。
しかしLEDは寿命だけを売りにするには高すぎる。大損だ。

LEDの強さは何か?
それは「付けたり消したり」に強いことだ。
トイレ、風呂、洗面所、キッチンの蛍光灯は大して使ってないはずなのにすぐ寿命が来ると思う。
蛍光灯はつけたり消したりに圧倒的に弱いのだ。
あんまり細かくつけたり消したりすると、電力使用の分散には貢献するのかもしれないが、お金的にも地球の資源としては無駄なのである。

LED。こいつは付けたり消したりしてもビクともしない。白熱電球も強い。
だから信号機で蛍光灯は見たことがあまりないと思う。わかりやすいだろう?

付けたり消したりするところにLED。つけっぱなしにするところが長いリビング等に蛍光灯。

そういうことなんだよ。

東日本大震災 3

(電子音)緊急地震速報です 強い揺れに警戒してください
(電子音)緊急地震速報です 強い揺れに警戒してください

緊急地震速報です。次の区域では強い揺れに警戒してください。
宮城県 岩手県 福島県 秋田県 山形県です。
揺れが来るまではわずかな時間しかありません。
怪我をしないように自分の身の安全を守ってください。
倒れやすい家具などからは離れてください。
また、上から落ちてくるものに気をつけてください。
緊急地震速報が出ました。
宮城県 岩手県 福島県 秋田県 山形県です。
怪我をしないように身の安全を確保してください。
倒れやすい家具などからは離れてください。

今、この国会でも揺れを感じています。
先ほど・・・・・国会の中でも揺れが続いています。
揺れが始まってから10秒以上経過しました 次第に

(チャイム音と画面の切り替わり)

国会中継の途中ですが、地震津波関連の情報をお伝えします
今、東京のスタジオも揺れています 東京のスタジオも揺れています
緊急地震速報が出ました
宮城県 岩手県 福島県 秋田県 山形県に 緊急地震速報です

また今東京渋谷のスタジオも揺れを感じています
東京渋谷のスタジオも揺れています

(背後で 揺れてます! の声)

強い揺れを観測した地域の皆さんにお伝えします
落ち着いて行動してください
揺れが収まってから火の始末をしてください

(背後で 揺れてるよ! の声)

まず上から落ちてくるもの 倒れてくるものから身を守ってください

(背後で 揺れてるよ! の声)

現在、東京渋谷のスタジオが大きく揺れています
東京渋谷のスタジオが大きく揺れています

(背後で 揺れてるよ凄い! の声)

建物の倒壊や山崩れ 崖崩れの恐れがあります

(背後で 揺れてるから! の声)

上から落ちてくるもの 倒れてくるものから身を守ってください

現在、東京渋谷のスタジオが非常に大きく揺れています
東京の渋谷のスタジオが大きく揺れています

(背後で 揺れてるよ!東京撮って! の声)

上から落ちてくるもの 倒れ・て・くる・ものから身を守ってください
揺れがおさまるまでしばらく安全な場所に居てください

(背後で 東京撮ってよ! の声)

揺れがおさまってから火の始末をしてください

(背後で 東京揺れてる! の声)

NHKでは新しい情報が入り次第お伝えします
テレビやラジオのスイッチを切らないでください

午後2時46分ごろ東北地方で強い地震がありました
震度7が宮城県北部です 震度7が宮城県北部

(背後で 震度7震度7だって の声)

また し 震度5弱が山形県 震度6強が宮城県中部
福島県中通り 福島県浜通り 茨城県北部
震度6弱が岩手県沿岸南部 岩手県内陸北部
岩手県内陸南部 宮城県南部などとなっています

(背後で 変われ!変えろ! の声)

(仙台駅の映像と車のわずかな防犯クラクション音)

(津波情報の明滅する日本地図への切り替わり)

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(大津波警報の電子音)

※参考引用 NHK 3.11当日の放送 -  ウェブ石碑
※画像はNHKの画面をイメージして作成したものです。

夏 熱中症対策と節電

例によってこういった類は福利厚生担当だ。

どんなに鍛えても、酷い冷え性じゃない人は暑がる。
仕事場では仕事着であり、それがスーツなら「我慢」「自制」も意味しているからやはり暑い。

ましてや本州の夏となれば、冷え性でも暑い。
北海道は夜になると涼しかったし、沖縄は何となく居心地がいいのは海流もあり、フォーマルな服装にアロハが許されるからだからだろうか。

熱中症というとたいてい気温だけで判断されるが、湿度も重要な役割を担ってくる。日本だと当たり前に湿度が高いから目立たないが・・・
よく不快指数というが不快というより熱中症リスク指数といっていい。
冬に暖房を30度にかけても夏の28度より苦しくならないし、海外で45度でも人間が生きていけるのは乾燥しているから、あるいは服装がきちんと対策されているからだ。

とはいえ、一般に会社には除湿器を配置していないしタンクトップは一般的ではない。

除湿をしっかりし、クーラーは風が当たらない人なら26度設定程度が快適に仕事が出来る条件とされている。
夏バテは自分にとっても会社にとっても同僚にとっても友人にとっても家族にとっても深刻である。

そして「theEastJapanGreatEarthQuakeDisaster」 - 東日本大震災で節電の大合唱が始まった。
普段なら冷え性で寒がる女性もうちわでパタパタする事態である。今は耐えるときだ。
ひたすら水を飲もう。

ところで、節電をしきりに訴えるのに髪がしっかりと長く、ドライヤーをガンガン使うのは
節電 = ライトと冷房だけ
と勘違いしてないかおい!

運動不足の冷え性に乗じ、あるいは経費削減に乗じ節電合唱をしてる悪い子はいないか!

Save is PAIN - 節電は痛みである
髪を切れ!

・・・・・(スタッフを見て) おっと、こいつはスキンヘッドだった・・・・

東日本大震災 2

2011年3月11日

私はこの日、約2週間の小さい仕事の終えるべき作業を完全に終え一段落していた。
15:00までの作業予定だったが、14:00に作業が終わったため仕事を切り上げ軽いエクササイズを始めていたところである。

当社においてトレーニングをしない者は居ない。最初は気が進まない者でも30代が近づくにつれ勝手にトレーニングを始めていた。この会社は食事やトレーニングの正しい知識は筋トレ歴10年を越える会社の連中が勝手に指導してくれるというわけだ。
私のトレーニング歴も15年あり、体格は一般的な成人男性より発達していた。

「トレーニングはどのくらい、どのタイミングですればいいのですか」

よくこんな内容の相談を受ける。

「体調が悪いとかなかったら、やれるときにやってしまいましょう」

いつもこういう返事をしていた。
トレーニングは出来るときに出来るだけしてしまう。
たとえば次の瞬間、仕事で何かが起こるかもしれない。
1秒後に、身内に大きな事が起こるかもしれない。

長い言い訳になってしまったが、この日は久しぶりに自主残業から解放された日であり、やれるときにやってしまえで少し速い時間に自宅にあるトレーニングコーナーに入ったというわけだ。仕事をサボったわけではない。

14:40過ぎた頃であろうか。
ウォームアップが終わった頃だ。

揺れを感じた。
地震の大きさはだいたい最初の揺れ-初期微動-で見当が付くと思う。
これは結構大きい地震だ。

部屋に有るあらゆる器具や本棚がきしみ始めた。

普段ならこのあたりで揺れは小さくなり始める。しかしこの地震はどのくらいのものか見当が付かなかった。
揺れが終わらない。

私は地震があったとき、 -行為の是非はさておき- 頑丈な建物や安全な平地に居るときその場から動かずに地震の様子を見るのが習性になっている。

この日のトレーニングは幸い”ハンドグリッパー”(スポーツショップでよく見る、握るだけの単純なトレーニング器具)から始まっており、地震の影響でダンベルやバーベルのような数十キロから数百キロの重い物が落ちてくる可能性はない。

揺れは強くなるばかりで、家具転倒防止の突っ張り棒がギシギシという不気味な音から激しい音に変わり、バツンバツンと断末魔を上げて「打ち破られた」。本棚が一気に倒れ始める。

[ 不明 (14:45?) 岩手県釜石市 第1波到達 ]

とにかく長い。何分目だろうか。次第に大きくなる揺れは物が多いトレーニング部屋では私に「危険な揺れだ」と判断させるに十分だった。
部屋の中は2日前に逃げ道の整理を終えていたものの、廊下は本棚が倒れている。片足ずつピョンピョンと本に足を突っ込みは抜き、突っ込みは抜きの脱出となった。漫画やら小説やら、積雪30cmといったところであろうか。

――なんてこった。これ片付けるのか。

物が少ない客室に逃げた頃、揺れは緩やかになった。
気がつくと手にカメラを持っている。2日前にいつでも出動できるように整備しておいたものだ。

確かどこかでこんな事を聞いた事がある。

「緊急事態において、カメラは持っている価値のあるものだ。
生命、またそれを救うための手段の次に」

この言葉にはなんだかよく分からないが従ってしまう重さがあった。突き動かされてしまったのだろう。意味はやはりよく分からない。

名誉とかはこういうとき重荷になるのか、砕け散った額縁のガラスも散っている。いつの間にか踵に小さい破片が刺さっていた。さっさと抜き取って部屋の様子を見回る。
仕事を終えてミュージックプレイヤーとなっていたパソコンのディスプレイは真っ暗である。
2~3日は停電だろうか。しばらくゆっくりするのもいいかもしれないな。
しかしガラス、電気使う掃除機が無いと吸いづらいじゃない・・・
仕方が無いな、とため息を付いた。

[ 14:46頃 停電 ] (これは我々から”情報”を奪った)
[ 不明 地震から0分 岩手県大船渡市 第1波到達 ]
[ 不明 地震から0分 宮城県石巻市 第1波到達 ]
[ 不明 宮城県南三陸町 第1波到達 ]
[ 不明 宮城県気仙沼市 第1波到達 ]
[ 不明 岩手県陸前高田市 第1波到達 ]
[ 不明 宮城県仙台市  第1波到達 ]

家をよく見回るとこの時点で普段の地震ではない光景があった。
電池だけ綺麗に抜き取られ、14:46で止まった壁掛け時計。
14:46から秒針が動きはするものの上がりきらない置き時計。

[ 14:48 地震から2分 岩手県宮古市 第1波到達 ]

窓から見えるお向かいの瓦がやけに落ちていた。

※参考 気象庁3/12-13発表資料