52 宮城県石巻市

大船渡に向かう途中の話である。

宮城県石巻市の日和山。カメラを持って車を降りた。

 

「アンちゃんたち、どっから来たんだい?」
撮影をしていると、知らないおじいさんに話しかけられる。
「七ヶ浜から大船渡の実家に向かう途中なんですが、6年間石巻の学校に居たんですよ」
この返事をすると、口調が柔らかくなったように感じた。
「おーおー、そうか、俺もそこに住んでおってなあ。全部やられた・・・・」

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石巻で出会った老人。自宅に母の位牌を探しに来たという。 2011/05

宮城県石巻市

死者数 3182
行方不明者数 595
建物全半壊数 33378

(2012/1現在。 www.pref.miyagi.jp より)


「宮城県警によりますと・・・・石巻 牡鹿半島の浜辺に・・・
1000体以上の遺体が・・・・打ち上げられているということです・・・・」
(当時のラジオ)

水分子の入り込める隙間を海に対してあけていた場所のあらゆるものが徹底して破壊された。
一軒家に17台の自動車が突っ込むような惨状も見られた。想像できるだろうか?

老人は位牌を探しに来たと言うが、ここまで破壊的だと見つかる気配は無いようにみえた。

石巻市は三陸の最下部に属する。本震災で最大の死者数を出した。ちなみに、建物の最大被害は本震災では仙台市である。

くだらない話だが、黒くて大きいカメラを持っているとどうも報道関係者に勘違いされる。
「どうもありがとうございます、ご苦労様です」と挨拶されることもある。
制作側には全く意図されてないだろうが、黒いカメラはフォーマルブラックの神妙な意味も持つのかも知れない。

■カメラ

ある被災地の床屋で
「どっかから来たガキ共がケータイで撮影しながらうろうろしている ふざけやがって」
とぼやく「おやっさん」が居た。
コンパクトデジカメやケータイだと、少なからず「馬鹿にされている」感が強く感じられるようである。

実際、半笑いで「スゲースゲー」いいながらケータイを向ける連中は多かった。
それもそれで脅威を伝えるという意味を持てば良いのだが、感情を逆撫でするように取られたのである。

私は撮影するときに必死に「必ず無駄にしない」と考えていた。
その言葉を毎度呟きながら、できる限り画質もしっかり残すために気を使った。
画質が良ければ良いほど、与える印象は強くなる。

被災地の写真集では、わざわざ朝日や夕日をバックに撮影したりすると思うが、あれは当然ずっと理想的な天候と時間まで待つわけである。
しかし、素晴らしいというとバツが悪いが、印象深いカットにまで仕上げていただけると、「伝えていただければ」という気持ちになる人々も多いのは事実である。

携帯でもなんでも撮影するときは、手を合わせると良いだろう。

 

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日和山より、門脇、南浜方面を望む。大量破壊兵器もこのようなものなのだろうか 2011/05

石巻市は漫画家「石ノ森章太郎」の名前の元にもなったところである。駅前には仮面ライダーやサイボーグ009の等身大程度の像が並んでいる。
よもやま話も付与しておくと、猫の島と言われる「田代島」の猫たちは津波でも無事だったが、現地では津波前から近年田代島の猫は近親交配が進みすぎ、病気で個体数が激減しつつあったということだ。

石巻は少々詳しくしゃべれるので、長くなる。