48 黒い感情

せめて 看取るまでは やさしい歌を

 

kekkonshiki

瓦礫の中に流れてついていた結婚式の写真。本人たちは無事だろうか – 2011/05

 – 500万円 –

東日本大震災において、世帯主が死亡した際、災害弔慰金として支給される金額。

 

結婚や離婚が増えているという。
たとえば停電の時に寂しさを感じた、というように震災現場から離れた人々が結婚の希望するというケースがあったが、
被災地の直撃地域では4割近くの離婚相談の増加が見られたという。

統計をとったわけではないので、その原因はわからない。
余りに悲惨な状態になって精神状態が不安定になったという説もあれば、相手が頼りないのが浮き彫りになった、という説もある。

家が奪われ、仕事が奪われ、つまりお金も奪われ、何もない。そんなとき、再び「任せろ!」といえるタフガイは滅多に居ないし、海ガールも滅多にいない。
専業主婦・主夫は立場が強そうだ。やるべき事は出来る。文句を言われる筋合いはない。そこに罪悪感はない。大黒柱「だった」相手に強く出れる。
大黒柱は職場が前提となるのでそうは行かない。
私の父親も大津波で職場を失ってから寝たきりのように非活動的になっている。

どろどろとしている事もある。

嫉妬やねたみが渦巻く場所もあった。
ある被災者はこんな事を言う。

「向こうの仮設を見てください こっちより少しきれいでしょう?なんでも新しい型らしいんです。なんでうちばっかりこんな目に遭わないと行けないと思います?マンションに行った○○さんはいいですよね」

しかしもっと酷いケースもあった。
あるご近所はこう言う。

「うちはかろうじて家が残った。それはいいんだけど。いい目で見られない。ことある事に
”○○さんは家残ったからね!”
と言われる。そのときの口調が本当に嫌なものを見るときのものなんです」

妬みや嫉妬である。

そのご近所はこう続けた。

「僕も家流された方が良かったんじゃないかと思っちゃいました」

まだ前に述べた犯罪のほうが聞くに堪えると思う。

黒い濁りが溢れ、口に出る・・・そんな状態だ。

 

もし、大黒柱が頼りないが、離婚しても行く当てがない状態だったら、その人物はどんなことをいうのか。
世帯主が死亡したら500万円の見舞金が出る。

ある奥さんは言う。

 

「そうそう、500万円も出るんですよねー!

 

 

うちもあの人が死ねば良かったのに