47 ウニとタコ

震災時の「激しい映像」は通電後のテレビでは見ることが出来なかった。
一説によると、気を使って放送を控えたという話もある。

インターネットの動画で当時の報道を見ると、陸前高田への希望的な予想は無くなった。

凄まじい動画だった。しかし、動画は動画だった。感想は「凄い」以上にはならないだろう。
どんな動画であろうが、あらゆるものに異様な力が加えられたときの大気に叩かれるような音や、街だった場所の圧倒的な質量は存在しなかったのである。

■海の遺体と海の幸
しばらくどうしようもない状態が続いたため、時に遺体は大した深さの無い所に着底しており、目視できたという。
聞くところによるとそういった遺体の目にウニが群がっているそうで、ウニはしばらく食べたくないという。

よく水死体が上がると、「シャコエビが遺体から飛び出てくる。しばらく見たくもない」という話を聞くと思う。
実際に目玉は真っ先に食べられそうな印象があるが、またそういう話が出たか、という気持ちだ。シャコエビの本当のところはわからない。

家に帰っていたGWのころだが、ある近所の同級生、その人物は市場で働いている家のものだが、食べていたタコから髪の毛が出て来て口に含んでしまった、という話をしにきた。
明るい顔はしていなかったが、怖いとか気持ち悪いとかいう話にはならなかった。
それがだれかがどうしても手に入れたい遺髪だと思うと、私はそんな扱いはする気にならなくなってしまっていたのである。

7月のころにはかなり片付いていた。まるで別の地のようだ。
しかし、この夏の暑い盛りに広島県警や徳島県警、時には沖縄県警が信号機の代わりに某を振っている。
まだ信号機が戻っていない状態だった。
日本中の警察がパトロールをしていた。

 

大船渡の水産加工会社の某所での話だ。
「新沼さん!じゃあまた!」
父親がその水産加工会社の社長と現地で別れの挨拶をした時
「社長!冷蔵庫から人が出ました!」

と掃除中の社員は叫んだ。

遺体はまだまだ出て来ている状態だった。10月を超えても週に何体か出てくる。