23 三途の川

シャリン・・・
ピロリーン・・・・

うう、うっうっ、ううううう・・・・・・・・

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宮城県七ヶ浜町 3月12日撮影

「・・・・・・」

何も遮るものがなくなったからか、潮風が強い。
老婆の泣き声も潮風に散っていく。

普通町中で音を出せば何かに当たって「響く」はずだった。しかし今当たるものはない。通り過ぎるヘリコプターの音、潮風の音も全て散っていく。
抜け殻のような人々が歩き、ときおり静かに伏せた家に携帯を向けて写真を撮っている。どこかで見たような、何かに似ている光景だった。なんだったっけっか・・・

無音では無い、しかし静寂の世界だった。

「ガソリンスタンドの隣、か・・・」

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宮城県七ヶ浜町 3月12日撮影

製油所の火災の時に親切なおっちゃんから聞いた場所だ。
何も無い。
ただ黙々と消防士が不明者を捜索している。

基礎だけの家に立っている1m程度の粗末な棒に巻かれたビニールの赤い旗が視界の片隅に入った。
何なのか解らないが、何を差し置いても立てる必要があった旗である。

なんだか進む気が失せてしまった。
釘を踏んじゃうかもしれないし・・・と引き返した。

たまたまこういった災害時に”しない方がいいこと”を知っていた私の本心は
「4月から東京に出張がある。ここで”性別も判別不能なほど破壊された子供”などを見た後話が通じないであろう地域に出張に出た場合、正気を保っている自信は無かった」
というものだった。

道路だった場所を歩くと、町内放送が始まった。

「小中学校・・・および・・・・保育所・・・まつぼっくり・・・・
児童館の・・・臨時休校について・・・お知らせします・・・・
3月・・・14日・・・月曜日は・・・臨時休校と・・・いたします・・・」

ふふ、臨時休校ね・・・そうだね、臨時休校、間違って学校に来ちゃったら、大変だもんね、ふふふ・・・・
ハハハハ、でもいいのかい?どう見たって14日だけじゃ済まないぜ!いいのかよたった1日で!無理だろそんなの!ハハハハハ!!!!