57 復興イベント

春の終わりから夏にかけて、我々元応援団員が石巻の復興イベントにちょくちょく呼ばれるようになっていた。
瓦礫撤去をしているわけではない。ボランティアと言うべきか、そうではないのか・・・

東京と石巻は地味に距離がある。
交通費もまずまずのもので、見舞金やら何やらも元々目減りしつつあった貯金を圧迫する・・・
災害は金がかかると憶えたり。

今度は地元ローカル局の復興イベントにからみ、どうも元応援団がエールを送って欲しいということで要望があった。
意外と大きいイベントらしいので、その日動ける東北にいる元団員が私を含め2名という寂しさでは足りない。

これは遠くから応援を呼ぶしかない。私は今は遠い所に住んでいる応援団の元同期に連絡を取ることにした。
広島にいるはずの知人である。

電話をすると、すぐ繋がった。

「新沼?ひさしぶりだねー」
「おお、元気か久しぶりだな。ちょっと頼みたいことがあってね」
「大丈夫だった-?そっち。大変だったよねー」
「おお、大丈夫だったよ。広島は平和だっただろ?」
「俺も今広島だけど、そんとき東北にいたんよねー」
「おいおい、本当かよ。どこに居たんだ?」
「福島だねー」
「そっちの方が大丈夫かって感じだね。転勤かなんかか」
「うんー、逃げてきたんよ」
「そいつは広島に実家があってまだ良かったな・・・福島のどこに居たわけ?」

「原発」
「は?」

「原発作業員やっとるんよね-。避難の指示が出てね―」
「お、おお。出るね。出たね。大丈夫なわけ?体」
「検査したけど問題は無いって言われたんよねー」

(略)

「うんー、あいつらにはこないだもあったしねー、連絡取れるよー」
「ありがとう。本当に感謝してる。東京からかかる金は全て出すよ」
「本当にそう言っておくよ-?僕が行けんくて申し訳ないねー」
「よしよし。ありがとよ」

そこで電話を切った。

原発は近い。