34 犯罪


聞いた話である。

自警団と窃盗犯の戦いはかなり苛烈なものがあったという。インターネットでも同じような事があったと散見できるので知っている方も多いと思う。
インターネットで上げられている例では方言など一言も示されていないが、リアルにその地方の言い回し(長年住んでいないと決して解らない程度の)が再現されている。
外部の人間には、このさりげなさはなかなか作れない。由緒正しい標準語の中に、トーンだけ”ケセン言葉”が混じっているような感じだ。(マニアックで申し訳ないが・・・)

私が聞く限りでは、戦闘が起きると窃盗を行う人間は「ビビッて」、数で勝る自警団も自警団の容赦ない攻撃は撲殺に等しいものもあったという。

最初は窃盗団も金庫を開けるためのバールを持つ程度だが、自警団の武装により、対抗措置としてさらにバットやゴルフクラブを持つに至った、と言う話もある。真実は?

 

聞いた話である。

新聞に載っていた気もするが、県外ナンバーの連中が少女幼女を誘拐しようとしたケースが多発しており、(平時でも良くある話だが)厳戒態勢が敷かれた。
これは平時でも発生する。つまり、どんなところでもそういった立場の人は集団行動をせよということだ。

ちなみに、検挙や発見が出来なかったからかも知れないし、十分なデータが出そろっていないだけかも知れないが、昨年より犯罪数は少ないペースである。
(宮城県警 犯罪統計参考。http://www.police.pref.miyagi.jp/hp/keiso/toukei/toukei_index.html#saisin)

 

聞いた話である。

破壊的な大津波といえど、原形を留める遺体はある。男が女性の遺体を掘り出し、死体を

つまりそういうことだ。

聞かなかった話である。

上記の誘拐はどう判断すべきか迷うが、強盗などの実際人間を打ち倒すような話は聞かなかった。強姦も聞かなかった。
ただの調査不足かも知れないので強くは言わないが、どこを巡っても本当に聞かなかった。むしろ前述の通り「ビビッた」窃盗犯が居た程度だったという。
バールを持った窃盗犯という凶悪そうな画像が流布されたせいか、内陸の人々からは本当に心配された。もちろん、被災者も心配したから自警団を結成したのだし、我々もそれに近い団体を作った。

 

本節を読むと、暴力に対して変な主張のようなものが目につくかも知れない。
よろしければ、「戦争における「人殺し」の心理学 」(ちくま学芸文庫) というのを読んでいただきたい。私の考えの多くが、たまたま災害の1年ほど前に読んだこの本から来ている。
今回の災害経験にあわせてかなり納得を深めることが出来た良著だ。

自警団が心配性の暴力主義者のように聞こえるかも知れないが、不安を持った人間に刺激を与えるのは良くないと言うことだ。
これは全くの持論だが、もしそういった状況に陥った場合、一般的な日本での自警団は、戦いに強く、人を叩き伏せたことはあれど、人の痛みを知るような人で構成されるのが望ましい。
過剰攻撃(オーバーキル)が起こりやすい状態なら、むしろ相手に心遣いがある程度が望ましい。

「なんでだよ!相手は犯罪者だろ!」
いい質問だ。こう言うのにしっかり自分の考えを示せないのは何かの「運動」や「思想」、「主義」に見えてこういった手記や経験談には問題が生じる。

まずここでは、冤罪考えないことにしよう。

通して犯罪者に優しく見えたかも知れないが、私が心配なのは自警団の方だ。こんな時に盗みを働く犯罪者は別になんというか、別に何回死んで貰ってもいいのだが、窃盗団が殺す気で反撃してきたなら、戦うこと自体が非常にリスキーだと言う事だ。その上一度転んだら出っ張っている瓦礫でバックリ肉を持って行かれるようなフィールドだ。その瓦礫の鋭さは、なにかにつまづいて少し強く踏んだだけで安全靴を貫通するという恐ろしいものなのだ。敵は窃盗団だけではない。

テレビ番組ではマスコミの入れる状態に回復しているため道路が見えたかも知れないが、攪拌された数メートルの鋭利な金属やコンクリ、ガラスが転がって、分厚く分厚く盛られた状態である。
まず一つ、危ないと言う事。
しかし、そんなことが問題なのではない。

人間をそのときは正当な理由で殺してしまっても、平時に戻ってそれを再評価され、批判されたとき精神に深いダメージを受けるとされている。書物でも、実感としても感じるのだが、間違いなく有事の行動は平時の人間に理解されない。英雄が一気に犯罪者になるのだ。
「おじいちゃん、ご苦労様!敵兵何人やっつけたの?」という評価が健全な戦争での殺傷行為であっても、教育が変われば「体制に従った人殺し」なのだ。その糾弾に耐えられる人間は少ない。

もちろん、そんな言いがかりを付けられて責められてしまっている人が居れば私は「あのときはしょうがない」と助け船を出したいわけだが、仕方が無かった、と説得して回るよりは最初から責められない行動を取るほうが現実的だ。つまり、降伏した相手には過剰攻撃はせずに、縛っておく程度にした方がよいということである。

とにかく、犯罪には平時から気を付けろと言う事だ。

 

 

見た話である。

真っ昼間に堂々と「茶色い紙」を持っている若者のグループという怪しい連中を見た。両手に余るような量だ。とても幸せそうな顔であった。
(こういうとき私がつくづく思うのは、せめて自分のあずかり知らぬ所で重要な決定権を持つ”印鑑”を廃止して欲しいということだ)

 

見た話である。

特に電気が来た頃から、妙に路肩にキレイめなバットやゴルフクラブが転がっていた。これが非常に多い。「元々、こんなところにあったっけ?」とおもったが・・・・なんだったのだろうか。キレイだから、使われていないと思いたいが・・・・

東日本大震災-136
何故か道ばたに増えるバットなど。もし多人数にこんな
ものを投げつけられたら、という最悪への想像力が必要かも知れない – 宮城県七ヶ浜町