73 所感 – 自衛隊

自衛隊は凄まじい働きを見せた。
何冊の本、何本の映像になったのかは解らない。

このどうしようもなく広範囲にわたる破壊下でさえ、一軒一軒から大事にしていたであろう品を道路脇にどけておく・・・・

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アルバムのようなものを確認している自衛隊員。

今回浸水地域に近い出身の自衛隊員である知人は、被災地派遣に希望したが漏れた。重要な役割があったようだ。
確かに彼は航空自衛隊で、さらにロシア・中国は被災後領空侵犯を繰り返したとされている。災害派遣をして貰っているため、日本としてはこれに対して強く出れなかった。外交は右手で握手し、左手にナイフを持っているとでも言おうか。
彼はナイフを抑える立場である。ひとしきり行きたかったとわめいているが・・・。

私は記者ではないので活動中の自衛隊員と話したりはしていない。ハタから見たら特に3月中旬~下旬に目撃した自衛隊員の疲労の色は濃かったように見える。近所に多賀城自衛隊という宿泊施設があったろうなので、七ヶ浜はそれでも元気な方だったのだろうか・・・・?

 

■救援活動

過酷な現場だ。分厚い瓦礫に安全靴だけで太刀打ち出来るものではない。怪我も多かっただろう。
陸前高田の例のように、目の前にあるガソリンに触れられず給油もままならない「縦割り」状態だったが、それでも素早い対応だったと思う。
私の逃げた避難所にはまるで震災前から準備されていたように発電機などの配備が速かった。(極めて序盤を参照のこと)

被災者の若者には自衛隊入隊希望者が少なからず増えるのではないか。
被災者は時に綺麗に亡くなった、また破壊しつくされた我が子と会い、それでも見つけてくれた自衛隊にお礼を言い続け、子供の亡骸に「見つけてもらえて良かったね、生まれ変わったら自衛隊に入ろうね」と声をかけた親もいたという。
震災をきっかけに被災地で入隊は増えたという。阪神大震災でも同じ現象はあったということだ。
最初は冬だから遺体の維持という面で良かったが、時間が経ってから遺体も大分痛む。持てばパーツが取れ、或いは2倍に膨らんでいたと。服に死臭は取れないという。運良く体験した事はないが確かに腐った貝のにおいが付いた服ですらトラウマになるのだ。さらに貝を弄る工場を取っ払ったときの土壌のにおいたるや・・・(あまり体験したことがないであろう例えでピンとこなくて申し訳ないが)
夢でうなされ、食事では胃液がこみ上げ、あるいは泣きながら作業する自衛隊員も居たという。

(参考 自衛隊救援活動日誌 扶桑社など)

■問題となった粗末な食事

自衛隊の食事は粗末だった。ビタミン不足などで大量の口内炎が生まれたという。
震災時自衛隊から缶詰を分けて貰ってきていたが、福神漬けとたくあん。ビタミンもミネラルも感じない。しかも缶は結構重量と容積がある。なんというか、贅沢にスペースを取っている缶だ。

誓ってもいい。私がこの缶の容積で満たせる栄養素をデザインしろと言われたなら、この缶一つでタンパク質と炭水化物の量以外は満足する内容にしてみせる。
(もちろん、人間味や味・・・そういったものからは大きく後退するかも知れないが・・・)

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実際この福神漬け、たくあん。味がある。
いやほんとにおいしいのだ。甘みがなかなかに絶妙で、確かに食が進む。
たくあんに関してはかなり上手に漬かったものにさえ2歩リード。

自衛隊では被災者に配慮して暖かい食事などは避けたという。温かい食事は被災者へ・・・・
なるほど私も被災直後に自衛隊的な活動する事となったなら、被災者に見つからなくても暖かいものを食べる気にならないだろう。どうだろうか。
この気持ちはわかる。ここまで配慮していただける隊員に感謝したい。

もちろん、(対外的に)配慮した食事と、栄養が十分に行き渡らないのは別な話である。冷たくても成人男性に必要な栄養をデザインされた・・・十分なビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、またタンパク質、必須脂肪酸、複合炭水化物を摂取するには十分なはずだ。
阪神大震災では比較的短時間で物資の供給が可能になったため、ここまでの大破壊は想定していなかったという事はあるかもしれない。
今後、非常時にもなるべく十分な栄養を取って、隊員が活動的に動けるようにしておくのは組織の義務であるのは間違いない。

寝不足は仕方がないのではないか。劣悪な環境、精神状態・・・・

自衛隊員はまず第一に真摯だった。ひたすらに優しかったのである。やり方などは確かにいろいろ考えつくだろう。しかしこと「実行する」となると、この状況では相手の心を解ろうとするという事以上に重要な要素があろうか?

自衛隊は世界で唯一、殺した数より救った数が多い軍隊と言われる。
人助けの訓練だけしていろ、と主張する者もいる。しかし最も過酷な戦争という状況を想定した訓練でなくては、優しさを実行するだけの力は持てない。

被災地で行われる君が代の演奏、国旗掲揚で不起立だった教師は居なくなっていたという。(*1)
(再起 – 宮嶋茂樹 KKベストセラーズ)

彼らの装備は、思いやりだった。

 

(*1)詳しく説明すると長い話になるので割愛しますが、
自衛隊に賛同しつつ、君が代・日の丸に反対という人はまずいません。