79 東京電力株主総会 2

ご存じの通りだと思うが、東京電力の福島第一原発は東日本大震災によってメルトダウンを引き起こし、半径20km以上にわたる広範囲にわたって人間が居住できないほどの放射能汚染を引き起こした。
同電力の福島第二原発もかなり危険な状態になり、”紙一重”で回避された。(※1)
(※1)増田尚宏福島第二原発所長発言を参考。2012年2月9日09時58分  読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20120208-OYT1T00979.htm

(一方、同規模の大津波に襲われた東北電力女川原子力発電所は両福島原発ほど大事に至っていない)

この事故を受け、株価は急落。「電力株が急落するなら、日本が傾いたときだ」というほど安心の投資対象だったが、本当にその通りになり、神話はもろくも崩れ去った。
つまりこの株主総会には、自分の資産を失った数々の「2次被災者」が大半だ。(もちろん、実際の被災者と比較して桁違いにダメージが低い)

※撮影が禁止されているため、文字だけになります。
(この様子の動画は違反ですがyoutubeに上がっていますので、気になった方はそちらをご覧下さい)

今回の株主総会で決定するいくつかの項目のうち、もっとも注目を浴びたのは原子力発電所による発電を将来的に継続していくかどうかであった。
株主総会として当然、動議・質問といった時間も用意されている。基本的に6時間、ずっと参加者からの”罵倒タイム”だが、決定項目以外にも、放射能汚染にどう責任を取っていくかも大きい議論となった。
この株主総会は、史上最長の6時間越えに至り、9000人以上が参加した。

広大な部屋はほぼ満席。
別室に行けば飲み物は飲めるがそれだけで、――当然と言えば当然だが――株主総会によくある”お土産”的なものは無いようだ。

やたら長い行列を処理する間に株主総会自体は始まっている。
勝俣会長の冒頭の挨拶による謝罪から始まった。

東京電力が
「異常に巨大な災害にあたり、免責にあたると考えています・・・・」
といえば、
「お前ら、わざわざ高い土地を掘り下げて作っただろう!」
「責任を取って死ね!」
「時代が時代なら切腹だぞ!」
と激しい叫び声が響く。

経営陣に近い前面10?番目の席までは「サクラ」(※2)で埋め尽くされているようで、経営陣が何かを言うと、前の席からだけ大拍手と共に「そうだ!」「異議なし!」といった声が響く。

(※2)ここでは総会屋ではないであろうということで、サクラとさせていただく。

一般的な株主の席からも怒鳴り声が響く。
「俺は開始45分前から居たんだぞ!なのに前の席はバッグが置かれて座れないじゃないか!」

動議・質問も怒鳴り声である。
「年金を削れ」
「放射能がもっと漏れているだろう 公表しろ!」
といった質問が続く。
質問は長く引っ張る者も居て、これが株主の疲労を増加させていく。

(大変激しい調子での質問だが、これら動議・質問はサクラによるガス抜き的なものであると考えられる。この問題に生命を賭けてきたようなジャーナリストが東電にとって厄介な発言をする可能性があるからだ)

これらの発言中、
「なんで前の席のやつらしか呼ばれねえんだよ!」
とまた怒鳴り声が響く。

この罵倒合戦は相当のもので、この間ディスプレイに映し出されている映像、つまり設置されているカメラがブルブルと揺れる。
日本シリーズの9回裏、ストライクが入ったときのようなあの映像の揺れである。

 

まとめると本原発事故に対する彼らの主張はこうだ。

・法に定める安全に最善を尽くした。
・史上希に見た大地震は、免責の対象である「異常に巨大な天災や社会的動乱」(※3)にあたるため、我々は責任を取る必要がないが、国とできる限り救済を行っていく所存である

(※3)原子力事業者は事故を起こしたとき、賠償などに”無限責任”を追うと定められているが、例外として「異常に巨大な天災」等による場合、責任を取らなくて良いこととなっている。
ちなみに、異常に巨大な天災で事故が起きたとき、「誰も責任を取らない」つまり、あくまで法的には、(血も涙も無いが)国も電力会社も賠償は1円も支払わなくて良い、という解釈が出来る。

・報酬も20%~60%カットする。
・地震はたいした事は無かったが(※4)、津波が過去の評価で5.5mのところを、13-14mが来るに至った

(※4)実際は地震の揺れの時点で、原発の設備に破損が認められていた可能性があることが示唆されている。
地震での破壊を認めると東電が責任をさらに追求されることになる。